ワイヤ放電加工におけるワイヤ傾斜角度測定用センサ


1.研究概要
 ワイヤ放電加工はワイヤ電極形状を転写する加工法であるため,ワイヤ姿勢が直接加工精度に影響を与える. したがって,高精度な加工を行うためには常にワイヤ姿勢を所望の形状が得られるように制御されている必要がある. しかし,加工中におけるワイヤ挙動は複雑であり,理想的なワイヤ姿勢と実際のワイヤ姿勢が一致するとは限らない. さらにテーパ加工や上下異形状加工において,ワイヤの剛性によるたわみやワイヤガイドとワイヤとのクリアランスは ワイヤ傾斜角度に誤差を生じせる原因となる.そこで,本研究ではワイヤ放電加工におけるテーパ加工及び上下異形状 加工の高精度化 のためにワイヤ姿勢が指令値と一致するようにワイヤ姿勢の補正制御を行うこと目的とし,ワイヤ傾斜 角度測定用のセンサ の開発を行った.

2.センサ概要
ワイヤ傾斜角度θを求めるには,図1に示すXhigh及びXlowの測定が必要である.そこで, ワイヤ傾斜角度の測定を行うために図2に示すワイヤ変位測定センサを新たに開発した. ワイヤ変位測定センサは2本の光ファイバ,レーザ,光ファイバコリメータ,光量検出 回路及びストレージスコープから構成されている.2本の光ファイバの受光面はワイヤ の変位方向と平行になるように隣接して設置されている.レーザはSELFOCレンズによっ て平行光として出力され,受光面に照射されている.2本の光ファイバの受光量は,そ れぞれ別のフォトトランジスタによってv1及びv2として検出される.受光面とレーザの 間をワイヤが通過すると受光面上にワイヤが投影される.そして,ワイヤ位置によって受 光面積が変化し,受光量が変化する.したがって,この受光量の変化からワイヤ位置を 求めることができる.また,ワイヤ変位の測定には光源の光量変化の影響を避けるため に基格化した(v1-v2)/(v1+v2)をセンサ出力Vとする.本方法は常に新しい加工 液が供給されるワイヤガイド近くにセンサを設置可能であり,加工屑などの影響を受け ずに実加工中 に使用できるなどの特徴がある.また,ワイヤ姿勢をインプロセス計測 する試みは初めてであり,2つのセンサを上ワイヤガイドと下ワイヤガイドにひとつず つ設置することにより高精度な測定が可能である.